【マンガシナリオです】クールな彼の無自覚な求愛

鼓動は正直

前回の続き。目が合う2人。
ばっ、目を逸らす紗矢。
ドッドッドッ…鼓動が激しくなる。
紗矢(え、どうしよう。先輩、周りに説明してるって言ってたけど、神崎も知ってるのかな。いやいや、何で私焦ってるの。神崎は恋愛とかどうでもよくて、私のことも何とも思ってないのに…)
藤野「いっちー?」
紗矢「あ、すみません、行きましょう」

ステージを見終わり
藤野「ごめん、いっちー。教授のとこに一瞬寄る用事あるの忘れてた。10分ぐらい適当に待っといてくれる?」
紗矢「わかりました」

棟の中を歩く紗矢。
紗矢(…!)
前から渉が歩いてきている。渉も紗矢に気づく。
紗矢「お疲れ」
渉「お疲れ」
紗矢「…。」
渉「ちょっといい?」

人のいない階段に座る2人。
紗矢「…。」
渉「彼女のフリしてるんでしょ?」
紗矢「あ、うん」
(良かった、知ってたんだ)
渉「先輩嬉しそうだったね」
紗矢「イベント楽しむ人だからね」
渉「そうじゃなくて…」
紗矢のスマホのバイブが鳴り、確認する。
スマホ画面。藤野から「今どこ?」と連絡。
紗矢(やばい、時間確認するの忘れてた)
「ごめん、私そろそろ行くね」
渉「先輩のとこ?」
紗矢「…うん」
立ち上がり離れようとした瞬間、座ったままの渉が紗矢の手を掴む。指を数本そっと握る感じ。
紗矢(え…)
下を向き、伏し目がちな渉。
紗矢(これは…引き留めてる!?え…)
ドキドキする紗矢。手元で着信が響きだす。

電話をかけている藤野の姿。

紗矢「…。」
鳴り止まない電話。
紗矢(出なきゃ…)
ゆっくり渉の手が離れる。
紗矢「もしもし。…すみません、すぐ行きますね」
電話を切る。
渉「ごめん…行って」
渉のことを気にしながら立ち去る。

紗矢(触れた指先が今も熱い。どうして引き留めようとしたんだろう)

外で手を繋ぎ歩く紗矢と藤野。
藤野「あ、いた」
視線の先に元カノ。
紗矢(あれが先輩の…)
こちらに気づき、不機嫌そうな顔で近付いてくる。
元カノ「その子が彼女?」
藤野「うん」
下から上にじーっと紗矢を見る。
紗矢(めっちゃ品定めされてるー)
元カノ「付き合ってどれぐらい?」
紗矢(やばい、決めてなかった)
ぎゅ、ぎゅ、藤野が繋いでる手を2回強く握る。
紗矢、藤野「「2ヶ月」」紗矢「です」
紗矢(先輩ナイス!)
元カノ「ふーん。こんな大勢の中で手繋ぐとかラブラブだね。…ねぇ、この人と付き合っても苦労しかしないよ?モテるから誰かに言い寄られてないかいつも心配しなきゃだし、休みの日は友達やバイト優先することも多いし。それに他の女の子にも優しいから自分は特別じゃないって思うの」
藤野「そんなっ…」
紗矢「それは間違ってます!」
強く言い返す。驚く藤野たち。
紗矢「先輩はモテるけど、彼女がいたら他の女の子に言い寄られても、ちゃんと断ってくれる人です。友達や仕事を大切にしてるの、私はすごく素敵だと思います。それに、どの女の子にも優しい人に彼女として選ばれた時点で特別ですよ!先輩と付き合っても何の苦労もしません!むしろ幸せ過ぎると思います」
頬が染まる藤野。
元カノ「…はぁ、もういい。どうぞお幸せに」
不満そうな顔で去っていく。
紗矢(撃退…できたのかな?)
「すみません、私、勝手にっ…」
藤野「いっちーこっち来て」
いきなり手を引く。

人のいない講義室に入る。
藤野「いっちー…」
ぎゅ、抱きしめる。驚く。
紗矢(え!?なになに!?)
藤野「…ありがとな。あんな風に言ってくれて、すげー嬉しかった」
紗矢(…先輩は、見た目がいいからモテると勘違いされる事も多い。でも本当の魅力は中身だと私は知っている。友達にも、彼女にも、初対面の人にも、真っ直ぐ向き合うのが先輩の優しさ。勉強もバレーもバイトも何事も一生懸命なのが先輩のかっこよさ)
「あの、そろそろ離してください」
藤野「今日は俺の彼女だから、好きなだけ抱きしめていいはずなんだけど」
藤野「もう解決したので、偽彼女終わりです!」
腕を紗矢の首の後ろに回したまま
藤野「あのさ…本当の彼女にならない?」
見つめる。
紗矢「…え」
藤野「だめ?」
紗矢(私、先輩に告白されてる!?…だけど…)
「私…好きな人がいて…」
藤野「え…付き合ってるってこと?」
紗矢「いえ…」
藤野「じゃあ、俺にチャンスくれない?」
紗矢「?」
藤野「お試しで俺と付き合ってほしい。それでもその男の方が良かったら、きっぱり諦めるから」


数日後。
○大学
玲香「藤野先輩とお試しで付き合うことになったぁ!?」
夢「偽彼女から仮彼女に昇格したんだね!」
紗矢(昇格って…)
「もちろん大学の外のみね。大学内では今まで通り」
玲香「何でお試しなの?先輩なら良い人だし、安心して紗矢を任せられるんだけど」
紗矢「…実は…好きな人がいてさ…」
夢「え!?紗矢ちゃんに!?」
頷く。
玲香「え、誰よ!?」
紗矢「…神崎」顔赤く。
玲香「あぁ、そっちかぁー!」
夢「神崎くん、紗矢ちゃんに優しいもんね」
玲香「何考えてるか分かんない事多いけど、良いやつなのは分かる」
紗矢「…成田から聞いたんだけど、神崎は恋愛に興味なくて彼女いらないみたい」
玲香「うわーぽいわー」
紗矢(だからといってすぐにこの気持ちが無くなるわけじゃない)


週末。
○紗矢の部屋
全身鏡の前で服を選んでいる。
紗矢「これだと子供っぽいかなぁ」
(今日は先輩と仮デート。そういえば、2人で出かけるの初めてだな)

玄関を出ると車で迎えに来た藤野がいる。
走り出す車。
藤野「良い天気で良かったな」
紗矢「ほんとですね」

○動物園
駐車場に停め、車から降りる2人。
藤野「動物園とかすげー久々」
紗矢「私もです!」
紗矢を見る藤野。
紗矢「?」
藤野「今日の服装めっちゃ好み」笑顔
紗矢「あ、ありがとうございます」照れる
藤野「じゃあ行くか」
ぎゅ、自然に手を繋ぐ藤野。
(え、彼氏の先輩ってこんな感じなの!?すでに甘過ぎて、心が追いついてないんだけど!)

園内をまわる2人。
紗矢「先輩は何の動物が好きなんですか?」
藤野「俺はトラかな。いっちーは?」
紗矢「ミーヤキャットです」
藤野「あー、あいつら可愛いよな!」
紗矢「あ、先輩!トラいましたよ!」
藤野「ほんとだ!」
動物を見ながら楽しむ2人。

藤野「ミーヤキャットいた!」
紗矢「か、かわいいー!」
藤野「一緒に写真撮るか」
インカメにしたスマホを自分たちに向ける。
紗矢と藤野は顔を近づける。カシャ

園を出て、車に乗った。
藤野「想像以上に楽しかったわー」
紗矢「大満足です!連れて来てくれてありがとうございます」
藤野「いえいえ」
(あーもうちょい一緒にいたいなぁ)
「店に送ればいい?」
紗矢「はい、お願いします」

○母の居酒屋、夕方
テーブル拭きながら準備中の紗矢。
紗矢(楽しかったし、彼氏としての先輩にときめいた。だけど……まぁ、まだお試し始まったばかりだしね)


数日後
○電車内、朝
人混みの中、紗矢が立っている。
スマホ画面。藤野からおはようのメッセージ。
紗矢(お試し付き合いが始まってから毎日連絡をくれる。朝のおはように始まり、夜のおやすみまで、授業やバイトがない時間は返信も早い。彼女にはマメなタイプなのかな)
返信を打つ。
渉「おはよ」
渉が横に来た。
紗矢「あ、おはよう!」
(びっくりしたぁ)スマホを胸に当て画面を隠す。
人の波に押され、肩が密着する。
ドキドキ…
紗矢(肩が触れるだけで、ここまでドキドキさせられる。あぁ、鼓動はいつも正直だ)
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