宵にかくして



……サナ、なんて、なぎ兄に呼ばれる日がくるなんて。
 

ふわりと顔を上げてかや兄の方を見ると、彼はふい、と興味なさげに視線を逸らしたかと思えば、私の頭をくしゃりと撫でる。


「……まあ、桜が決めたなら文句はない。俺は桜雅茅。よろしくな」


ぶっきらぼうなセリフとは裏腹に、髪を伝う指先はあたたかい、……いつも通りの、かや兄の温度。

 
てっきり一瞬で見破られると思っていたけれど、ふたりの反応はあくまで"初対面の寮生"に対するものだ。



私の頭を撫でながらゆるりと瞳を細めるなぎ兄と、そんななぎ兄に少し呆れたような表情を浮かべるかや兄、……私のだいすきなお兄ちゃんたちの姿に、胸の奥がきゅっと熱くなる。



……いつもと変わらない、やさしいお兄ちゃんたちの姿。
そんなやさしさが矢になって、ずき、と、鋭い棘のように突き刺さる。
 
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