フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
「へ?」
 
意外な指摘に、楓は目をパチパチとさせる。
 
ドキドキしているのは楓自身……それはその通りだけど、そこからどんな結論が導き出されるのかがわからない。
 
そういえば伊東も同じようなことを聞かれたな、と思いながら首を傾げる。
 
早苗が両手で顔を覆った。

「ひどすぎる……。本当に妖精になっちゃったのかもね。こうなってみると王子の方に同情するよ」

「は? 何言って……」
 
ムッとしながらも、彼女の言葉の意味を考えてみる。
 
伊東との関係は擬似恋愛。
 
でも、ドキドキしているのは楓自身の気持ちで……。

「え⁉︎」
 
まさかまさかの事実に気がついて、大きな声が口から出た。

「もしかして、私、伊東さんのこと……す……き……?」

「じゃないと、キスされて花火は打ち上がらないでしょ。好きじゃない相手からのキスなんて本当ならトラウマだよ」
 
早苗は疲れきったようにうなずいてぶつぶつ言う。

「我が姉ながらヤバすぎる。これってなにかの呪いかな? ご先祖さまがなんかした?」
 
楓は自分の胸に手をあてて半信半疑のまま考える。
 
今ドキドキしているのはまぎれもなく自分自身の心臓だ。

「だだだだけど、だけどなんで⁉︎ そんなつもりなかったのに」

「なんでって、そんなつもりなくてもそうなるんだよ。恋はいつも予想外、気がついたら落ちてるの」
 
なにやら名言的なことを口にして、やれやれといった様子で早苗は腕を組んだ。

「問題はなぜ王子がキスをしたかってところなんだよなー」
 
楓はまだ自分の状況を受け止めきれていないのに、もう次の話題にいっている。

「普通に考えたら、向こうもお姉ちゃんのことが好きってことなるけど」

「は? ないないない、それはないよ」
 
楓は全力で否定した。

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