フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
倫vs太田
午後三時、取引先を回るため倫が会社を出ると予報より少し早く雪がチラついていた。普段通りの業務をこなしているだけなのに、身体が重くエネルギーを使う。
頭に浮かぶのは午前中に経理課で見た楓の様子だった。
やっぱり自分は楓を傷つけてしまった。それが耐えがたいほどにつらかった。
いや自分にはつらいなどと言う資格はない。ほかでもない諸悪の根源なのだから。
とりあえず楓が会社に来ているようでホッとした。
顔を見られて安心はしたが、すぐに経理課に行ったことを後悔した。
倫に気がついた楓が青ざめて、ささっとモニターの陰に隠れたからだ。倫の顔を見るのが嫌なのだろう。
憂うつな気持ちで歩き出すと、コツコツと軽快な足音が自分を追いかけてくる。
振り返ると太田だった。
「よ、王子じゃん、お疲れ、おでかけ?」
気づかぬふりでスルーしたいところだが、こうなると無理だ。
「お疲れさまです。はい。外回りに。太田さんも?」
もう今日は相手をする心のゆとりはゼロだが、逃げ場がなく返事をした。
「うん、ちょっとね」
並んで駅に向かう。彼がどこまで行くのか不明だが、憂うつだと心の中でため息をついた。しかも気持ち悪いくらいニヤニヤとしてこっちを見ている。
「ご機嫌ですね。どうかしたんですか?」
興味はないけど聞いてやると、待ってましたとばかりに、目を輝かせた。
「聞いてくれる? なんとなんと今夜、子リスちゃんと飲みに行くことになりました!」
は⁉︎
芝居がかった感じでパチパチと拍手する太田を凝視した。
子リスちゃんって楓だよな? なんでいきなりそんな話に?
頭に浮かぶのは午前中に経理課で見た楓の様子だった。
やっぱり自分は楓を傷つけてしまった。それが耐えがたいほどにつらかった。
いや自分にはつらいなどと言う資格はない。ほかでもない諸悪の根源なのだから。
とりあえず楓が会社に来ているようでホッとした。
顔を見られて安心はしたが、すぐに経理課に行ったことを後悔した。
倫に気がついた楓が青ざめて、ささっとモニターの陰に隠れたからだ。倫の顔を見るのが嫌なのだろう。
憂うつな気持ちで歩き出すと、コツコツと軽快な足音が自分を追いかけてくる。
振り返ると太田だった。
「よ、王子じゃん、お疲れ、おでかけ?」
気づかぬふりでスルーしたいところだが、こうなると無理だ。
「お疲れさまです。はい。外回りに。太田さんも?」
もう今日は相手をする心のゆとりはゼロだが、逃げ場がなく返事をした。
「うん、ちょっとね」
並んで駅に向かう。彼がどこまで行くのか不明だが、憂うつだと心の中でため息をついた。しかも気持ち悪いくらいニヤニヤとしてこっちを見ている。
「ご機嫌ですね。どうかしたんですか?」
興味はないけど聞いてやると、待ってましたとばかりに、目を輝かせた。
「聞いてくれる? なんとなんと今夜、子リスちゃんと飲みに行くことになりました!」
は⁉︎
芝居がかった感じでパチパチと拍手する太田を凝視した。
子リスちゃんって楓だよな? なんでいきなりそんな話に?