フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
社会人の義務として、新年会と忘年会、歓送迎会には参加するがそれ以外は極力避けている……というよりは、普段の懸命な座敷童子化のおかげか、そもそも滅多に誘われない。
 
伊東からの誘いも、もちろん断る一択だが、誘われたことがほとんどないため、どうやって断ればいいかがわからない。
 
まごまごしている楓の代わりに答えたのは山口だった。

「喜んで! わーやったね、藤嶋さん。ねえ伊東さん、藤嶋さんってすごく優秀でしょう?」

「ええ、とても。すごく頼りになりました」

「だよね、だよね。経理課(わたしたち)は知ってるけど。さすが〜! ね、課長?」
 
植島がニコニコと笑った。

「ああ、嬉しいねぇ。僕も鼻が高い。行っておいでよ藤嶋さん。営業部長は気前がいいからご褒美をくれるかもしれないよ」

「部長からは藤嶋さんの分の飲み代も出してもらえることになっています」
 
伊東の言葉に、なぜか山口のテンションが上がる。

「わーい! 太っ腹! だけど伊東くん、あまり飲ませないようにしてね。藤嶋さん、アルコールは強くないから」
 
保護者みたいなことを言っている。
 
それに伊東が「もちろんです」と請け負って、楓がひと言も発しないうちに、飲み会に行くことになってしまったのである。
 
営業部の飲み会に経理課がひとりで参加するなんて、アウェイすぎる。
 
絶対に、なんだコイツと思われる……。
 
この世の終わりのような気分で参加したが、結論から言うと想定していたよりは随分ましだった。
 
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