フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
嫌いなのにあれだけモテれば悪態をつきたくなるのはわかるけれど。

「べつに女がってわけじゃないけど、皆外面に騙されててバカだなとは思うかな」
 
ある程度予想はしていたけど、彼の人格はそれを遥かに越えている。
 
これはそうとうな腹黒だ。
 
表の顔は優等生で裏の顔は腹黒キャラ。
 
フィクションとして楽しむ分にはありだけれど、実際に見るとめちゃくちゃ怖い。
 
こんなの見ちゃったら次からはフィクションでも心から楽しめないかも……。
 
もうこれ以上は知りたくなくて、楓はさっきの言葉を繰り返した。

「私、誰にも言いません。てか、言うつもりはなかったです」
 
立場が逆じゃないかという疑問はさておき、穏便に済ますのが一番だ。
 
現実世界のあれこれとは関わりたくない。

「あの日は酔ってしまってつい……」
 
けれどそれを、ぞんざいに遮られる。

「信用できないね」

伊東が疑わしげに目を細めた。

「女の"絶対に言わない"くらい信用できないものはない。どうせあれだろ? ここだけの話〜の前振りだろ?」

「え、すごい偏見……。それはないです、私は絶対に言わないって言ったら絶対に言いません」

「はっ、現に俺に言ったじゃねーか」
 
会社の人が見たら目を剥くだろうセリフを彼はすらすらと口にする。が、半年間の脳内アテレコの効果か、楓はだんだんと慣れてきた。
 
それにしても、脳内アテレコはあくまでもフィクション思っていたけれど、実は心の声が聞こえていたのだと思うくらいだ。
 
もしかして私、読心術を手に入れた?
 
テレレレテーレッテー!
 
頭の中でファンファーレが鳴る。
 
……て、レベルアップしてる場合じゃなくて。

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