フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
「あ……えーっと、私、ちょっとしたきっかけで、すぐに妄想してしまうんです。ここのメロンクリームソーダはすごくキレイだから……その、宇宙みたいだなーって」
 
バカにされるかな? されるだろうな、と思いながら説明する。
 
それでもべつにかまわないし。

「……妄想して楽しくなっていたのか」

「あ……はい、そうです」
 
伊東はメロンソーダと楓を見比べている。なんだコイツと思われているのは確かだが、なにも言わなかった。

「で、いつもそれを小説にしているのか?」

「え? えーっと。する時もあるし、その場限りの空想で終わる時もありますが」
 
伊東がふうんと言ってコーヒーを飲んだ。

「お前のアカウント、たくさん小説がUPされてたけど、あれ全部妄想か?」

「うう、はいそうです」
 
答えるうちにやっぱりちょっと恥ずかしくなってくる。
 
バカにされるのも嫌だけど、淡々と口にされるのもムズムズする。
 
だって、やっぱり、妄想小説を書いてるなんて、ちょっと変な趣味だ。それをこんな風に深掘りしてくるなんて、もしかしてあれだろうか。
 
嫌がらせに、嫌がらせで返されてる?
 
ネチネチと弱みを突いてくる作戦?
 
だとしたらドSがすぎると思うけれど、意外にも伊東の表情にはバカにしたような笑みは浮かんでいなかった。
 
変なやつと思っているのは明白だが、バカにしたような感じはしない。ただ興味で聞いているという雰囲気だ。
 
そしてまた彼は黙り込む。
 
少しだけ、勢いをなくしたように思えるのは気のせいだろうか。
 
あの小説そんなにショックだった?
 
でも完全にフィクションなんだし、リアルに感じることはないはずだ。
 
私だって変だけど、この人も同じくらいか、それ以上だよね……と思いながら、楓がストローをくわえた時。

「……書き直せ」

「は?」

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