フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
「あの小説だ。俺が主人公ならそう要求する権利がある」
 
え、そんな権利ないですけど。
 
それより言っている意味がわからなかった。

「えーと、あれを? 書き直すって……?」

「そうだ、どう考えてもおかしいだろう。俺が破滅するなんて。ちゃんとハッピーエンドにしろ」

「え」
 
ますます意味がわからない。いや言葉の意味はわかるが、彼の意図がわからない。
 
なぜそんなことを……。

「おかしいだろう?」
 
伊東が机を人差し指でコンコンと叩いた。

「俺を主人公にしたくなるのはわかる。この見た目だからな。インスピレーションが沸くんだろう」

「はぁ」

「でもなぜあんな最低な描写になるんだ? どう考えても俺は完璧なキラキラ愛され王子だろう。だとしたら物語はどう転んでもハッピーエンドだ。破滅なんてあり得ない」
 
いやいやいや、この人どんだけナルシスト?

「でもそこは私の主観ですし」

「あのなぁ」と伊東はため息を吐いた。

「お前、妄想得意なんだろ? だったらそれくらいはできるはずだ。やれ、そしたら今度こそお互いに干渉しないで二度とこうやって会わずにすむ」
 
いやいやいや、干渉してるのそちらさまのみになりますが?

「え、ハッピーエンドにすればいいんですか? リン王子は国民に嫌われていますが、恐怖政治をしいて、国は丸く収まりました的な?」
 
それかリン王子自身が魔王となり国を破滅させて満足的な?
 
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