フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
結局、メッセージアプリで互いの連絡先を交換することになってしまった。
 
うう、最悪、と思っていると、伊東が立ち上がり、にっこりと微笑んだ。

「新作、楽しみにしております。カエデちゃん先生?」
 
明らかにバカにしたようなことを言って、彼はにっこりと微笑む。
 
ぐぬぬぬぬと思っているうちに彼は颯爽と帰っていった。
 
残された楓は、ガクッとテーブルに項垂れた。
 
恐るべし、悪魔、伊東!
 
現実で仕返しをすると返り討ちに遭うから、妄想世界で仕返ししたのに、結局返り討ちに遭ってしまった……。
 
自分がまぬけなのか、伊東が極悪非道なのか。
 
ああ 、なんでUPしちゃったんだろうと、公開を後悔。
 
私って本当にバカなんだなーと思いながら残りのメロンソーダを飲み干した。
 
頭に血が昇ると後先考えずに暴走してしまう。
 
だとしても、嫌がらせにも程がある。
 
妄想小説を読まれただけでも、クリティカルヒットだったのに、よりによって創作内容に口出しされるなんて。
 
しかも伊東との恋愛小説……。
 
嫌だけど、さっさと終わらせよう。
 
ちゃちゃっと書いてしまえばいいと自分自身にハッパをかけて目を閉じる。
 
脚本は藤嶋楓……。
 
脳裏に浮かぶのは、王子さま姿の伊東倫。見てくれはとってもとってもカッコいい。

(けれど中身は極悪非道)
 
そんな彼に、メイドに扮した楓が私が恋……。
 
——って。
「やっぱり、無理!」
 
ぞくぞくしながら声をあげてドンとテーブルを拳で叩く。
 
ソーダの氷がカランと鳴って、楓はガクッと項垂れた。
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