フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
意味不明なデートの誘い
三回目の伊東からの呼び出しは、二週間後のことだった。
《例の喫茶店、七時》という短いメッセージを受け取った日の七時。
楓は伊東といつもの席で向かい合わせに座っている。
このシチュエーション、この間から何回繰り返すんだろう?
げんなりとしていると、話に入る前にいつもの女性店員に伊東が注文する。
「ホットコーヒーと、メロンクリームソーダをお願いします」
「え」
思わず声を漏らすと睨まれた。
「あ?」
「……いえ、なにも」
まぁ、メロンソーダで間違いないけれどもと思っていると、女性はにっこり笑ってさがっていった。
そして注文の品が運ばれてきたタイミングで彼は本題に入る。コーヒーをひと口飲んで口を開いた。
「お前、前回の俺の話聞いてたか?」
「も、もちろん聞いてましたよ。だからちゃんと書いてるじゃないですか」
楓は口を尖らせた。
今日呼び出された理由には心あたりがあった。命じられて書いている作品に、彼が満足していないのだろう。
『リン王子とメイドの恋』は、楓をモデルした主人公カエデが、リン王子のメイドになるところからはじまる。
見た目がカッコよく優秀なリン王子は、国民の人気者。メイドとして働くことになったカエデは、そんな彼を間近で見て恋に落ちる……という単純かつなんのひねりもないストーリーだ。
望んで書いているわけでもないし、超絶気が乗らないミッションなのだからそれで十分。
今は、カエデが王宮で働きだし、リン王子の人となりをすぐ近くで見ているというところまできている。
リン王子は、民には慈悲深く優しい王子として知られているが、その実性格は腹黒で、カエデが淹れた紅茶に文句を言ったり、花嫁候補の令嬢たちの悪口を言ってカエデを不快な気持ちにさせている……。
「アホか。あれじゃただの悪口じゃないか。嫌がらせ続行か?」
「そんなつもりはないです」
《例の喫茶店、七時》という短いメッセージを受け取った日の七時。
楓は伊東といつもの席で向かい合わせに座っている。
このシチュエーション、この間から何回繰り返すんだろう?
げんなりとしていると、話に入る前にいつもの女性店員に伊東が注文する。
「ホットコーヒーと、メロンクリームソーダをお願いします」
「え」
思わず声を漏らすと睨まれた。
「あ?」
「……いえ、なにも」
まぁ、メロンソーダで間違いないけれどもと思っていると、女性はにっこり笑ってさがっていった。
そして注文の品が運ばれてきたタイミングで彼は本題に入る。コーヒーをひと口飲んで口を開いた。
「お前、前回の俺の話聞いてたか?」
「も、もちろん聞いてましたよ。だからちゃんと書いてるじゃないですか」
楓は口を尖らせた。
今日呼び出された理由には心あたりがあった。命じられて書いている作品に、彼が満足していないのだろう。
『リン王子とメイドの恋』は、楓をモデルした主人公カエデが、リン王子のメイドになるところからはじまる。
見た目がカッコよく優秀なリン王子は、国民の人気者。メイドとして働くことになったカエデは、そんな彼を間近で見て恋に落ちる……という単純かつなんのひねりもないストーリーだ。
望んで書いているわけでもないし、超絶気が乗らないミッションなのだからそれで十分。
今は、カエデが王宮で働きだし、リン王子の人となりをすぐ近くで見ているというところまできている。
リン王子は、民には慈悲深く優しい王子として知られているが、その実性格は腹黒で、カエデが淹れた紅茶に文句を言ったり、花嫁候補の令嬢たちの悪口を言ってカエデを不快な気持ちにさせている……。
「アホか。あれじゃただの悪口じゃないか。嫌がらせ続行か?」
「そんなつもりはないです」