フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜

トラウマと、迷い

《うひゃひゃひゃひゃ! なんでそんな面白いことになってんの?》
 
ハンズフリーにしたスマホから聞こえる早苗の笑い声が部屋に響く。
 
ひとり暮らしのマンションにて楓はテーブルに沈没した。

「全然わかんないよ、もうなにがなんだか。あの人と喋ってるとバカになる……」
 
決闘を……じゃなくてデートの約束したあと店を出て、楓はカッカしながら帰ってきた。
 
家でひとりになり、冷静になってくるとなんてバカな約束をしたんだろうと自己嫌悪。途方に暮れていると、早苗から電話が入ったのである。

《おっつ〜! ドS王子との進展のご報告をお願いしまーす!》
 
進展なんてしないってば!と言い返し、その代わりについさっき起こった、意味不明な出来事を話したのである。

《バッチリがっつり進展してんじゃん。あーおかしい。それにしてもお姉ちゃんやるね〜。デートにまでこぎつけるなんて》

「違うよ! 私から言ったんじゃなくて、あっちから」

《だからそれがすごいって言ってるの。誰とも連絡先を交換しない孤高の王子に、向こうから言わせるなんて超高等テクニック。めっちゃレベルアップじゃん! ファビュラス 姉妹に弟子入りでもした? ファビュラス楓になっちゃった?》

「うるさい」

《で? どこに行くの?》

「どこに行きたいかは、こっちのリクエストを聞いてやるから決まったらメールしろって言われてる。……でもやっぱり断ろうと思ってる」
 
あの時は、まさに売り言葉に買い言葉であんなことになってしまった。勢いでとんでもないものを買ってしまったと後悔してるから、今からでもクーリングオフしようと思っている。

「……だって、どう考えてもおかしいでしょ」

《なんで? 王子が嫌いだから? 一日中一緒なんて虫唾が走る感じ?》
 
その問いかけに、楓は伏せた顔を上げる。

「虫唾が走る……。どうかな、そこまでではないような気がするんだけど……」
 
身体はベタッと伏せたまま、腕に頬を乗せて考える。
 
今日の呼び出しで、伊東に対する印象は少し変わった。
 
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