フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
誰に?といわれたらわからないけれど、全世界に言われるような気がする。

「……そうかも。だって妄想で充分っていうのは本当だし。私にはリア充する資格がないもん」

《そんなこと言って〜。お姉ちゃん、いっつもそう言うけどさー、資格なんていらないよ、てかそんな名前の資格はない》

「いるんだってあるんだって」

《お姉ちゃんが勝手に思ってるだけだって》
 
それはリアルを自然と楽しめる人の理論だ。

《フィクションでの擬似体験を否定するつもりはないけど、リアルもすごいよ、楽しいよ、胸熱だよ。お姉ちゃんにも知ってほしいなって私は思う。私だけじゃなく、お母さんもお父さんも、ご先祖さまもそう思ってる》

「ご先祖さまって」
 
思わずふふふと笑ってしまい少し肩の力が抜けた。

《それにさー、お姉ちゃんその人のことべつに好きじゃないんでしょ? だったらどう思われようがよくない? かえって気楽だよ。予行演習にぴったり。リハビリさせてもらいなよ。スカイツリー、お台場、六本木ヒルズ! 全部連れてってもらっちゃえ!》

「鳩バスじゃないんだから」
 
その後は、滞在期間の話をして早苗の電話は切れた。
 
スマホを見つめたまま楓は考え込む。
 
リハビリか。
 
今までの楓なら、どんな理由だとしても断るの一択だ。
 
デートなんて絶対に無理。そんなこと現実には望んでいないし。妄想世界の中でなら安全かつ、現実よりももっとドラマティックに楽しめるから。
 
その方がいい。それが自分にはあっている。
 
……だけど本当は、ほんのちょっと、憧れる気持ちがあるのも事実だった。リアルでも経験してみたいと思っている。
 
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