フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
望んだって実現しないだろうけど、はからずもその機会が目の前にある。チャンスなのか傷つけられる前のフラグなのかわからないけれど。
 
相手はあの伊東倫。
 
どんな一日になるのか、まったく想像もつかなかった。
 
ただわかるのはきっと自分が男女のデートでは相応しくない振る舞いをしてしまうだろうということ。
 
気をつけるけれど、なにしろ正解を知らないのだから、パーフェクト回答は無理だろう。
 
そしたら伊東倫はどうするだろう。
 
お前アホかと叱られる?
 
こんなやつ連れてくるべきじゃなかったと呆れられる?
 
けちょんけちょんに言われるかも。
 
けれど、その光景が頭にうかんでも不思議と怖いとは思わなかった。
 
——だってあっちだって私に負けず劣らず変人だし。
 
それに今日みたいな言い合いになるなら、ちょっと楽しいかもしれないな、という気すらする。
 
もともと変なやつとは思われているし、好感度の残量はもはやゼロだ。
 
それになんとなくではあるけれど、彼ならばズレたところを見られても、気持ち悪い軽蔑、というところまでは思われないような気がした。
 
怖い、怖いのはその通りだけど……。
 
トークアプリを起動して、伊東倫との画面を見つめながら、楓はもんもんと考えていた。
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