フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
どうしようかと迷いながら、しばらく楓は彼を見つめる。
 
もうこのまま帰ってしまいたい気分だった。
 
精一杯オシャレしてきたつもりなのに、どうしてか急に自分が超絶ダサい人のように思えた。
 
とはいえ黙って帰るのはさすがに非常識。楓は思い切って歩み寄り「伊東さん」と声をかけた。
 
振り返った伊東が一瞬、空を突かれたような表情になった。

「……もしかして、藤嶋さん?」

「はい」
 
答えると「まじで」と呟いた。

「メガネがないからわからなかった」
 
ある程度予想通りの反応に恥ずかしくなって楓の頬が熱くなった。
 
メガネをしてこなかったのは、早苗からの指示だった。

「い、妹が、今日はコンタクトにしていけって……。目が乾くのでメガネの方が楽なんですけど」
 
やいやい言われてそうしてきたけれど、変に張り切ってると思われただろうか。
 
まぁその通りなのだけれど。

「すみません」
 
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