フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
「デートだろう。まさかなんのために来たのか忘れたのか」
「あ、そっか。そうだった」
ふたりの間ではもうおなじみになったようなやりとりだ。バカなやつと思われているのは確かだけれど、今日の伊東はいつもと少し違っていた。
「なんだそれ」
声の響きは柔らかく責めているという風ではない。それどころかどこかおかしそうに微笑んでいる。
少し意外な彼の反応に、楓が面食らっていると「なに?」と問いかけられる。
「今日は怒らないんですね」
思ったことをそのまま口にすると伊東が今度は渋い表情になった。
「だから……。今日の目的を忘れたのか? それか、怒ってほしいとか? もしかしてSキャラの方が好き? なら好みに合わせてやるけど?」
おかしそうに笑いながら、少し脅かすように言う。
冗談だとはわかりつつ、そんな趣味はない楓は慌てて首を横に振った。
「い、いいえ。ノ、ノーマルコースでお願いします!」
少し大きな声になってしまう。
通りすがりの女性がギョッとしたようにこちらを見た。
「お前……! やめろって」
伊東が噴き出した。
「変なサービスだと思われるだろう」
そのまま肩を揺らして笑っている。その笑顔に楓の胸がドキンと跳ねた。
彼の笑顔をはじめて見た、という気がした。
いや実際にはそうではない。会社にいる時の彼はいつもにこやかだ。けれど、作り物の笑顔という感じがしてどこか気持ち悪かった。
こんな、自然な笑顔ははじめてだ。
手放しの笑顔は力が抜けていてさっきの洗練された雰囲気は吹き飛んでいる。
けれど、それでもとても魅力的で、この人本当にカッコいいんだ、と今さらそんなことが頭に浮かんだ。
『少女漫画の王道じゃん』という早苗の言葉を思い出す。
どうしてか急に恥ずかしくなってきて、楓は照れ隠しに口を尖らせる。
「い、伊東さんが変なこと言うから」
「だからって。言い方」
「それは、すみません」
そんなやり取りをする間も学生と思しき三人組がチラチラとこちらを見ながら通り過ぎていく。
「あ、そっか。そうだった」
ふたりの間ではもうおなじみになったようなやりとりだ。バカなやつと思われているのは確かだけれど、今日の伊東はいつもと少し違っていた。
「なんだそれ」
声の響きは柔らかく責めているという風ではない。それどころかどこかおかしそうに微笑んでいる。
少し意外な彼の反応に、楓が面食らっていると「なに?」と問いかけられる。
「今日は怒らないんですね」
思ったことをそのまま口にすると伊東が今度は渋い表情になった。
「だから……。今日の目的を忘れたのか? それか、怒ってほしいとか? もしかしてSキャラの方が好き? なら好みに合わせてやるけど?」
おかしそうに笑いながら、少し脅かすように言う。
冗談だとはわかりつつ、そんな趣味はない楓は慌てて首を横に振った。
「い、いいえ。ノ、ノーマルコースでお願いします!」
少し大きな声になってしまう。
通りすがりの女性がギョッとしたようにこちらを見た。
「お前……! やめろって」
伊東が噴き出した。
「変なサービスだと思われるだろう」
そのまま肩を揺らして笑っている。その笑顔に楓の胸がドキンと跳ねた。
彼の笑顔をはじめて見た、という気がした。
いや実際にはそうではない。会社にいる時の彼はいつもにこやかだ。けれど、作り物の笑顔という感じがしてどこか気持ち悪かった。
こんな、自然な笑顔ははじめてだ。
手放しの笑顔は力が抜けていてさっきの洗練された雰囲気は吹き飛んでいる。
けれど、それでもとても魅力的で、この人本当にカッコいいんだ、と今さらそんなことが頭に浮かんだ。
『少女漫画の王道じゃん』という早苗の言葉を思い出す。
どうしてか急に恥ずかしくなってきて、楓は照れ隠しに口を尖らせる。
「い、伊東さんが変なこと言うから」
「だからって。言い方」
「それは、すみません」
そんなやり取りをする間も学生と思しき三人組がチラチラとこちらを見ながら通り過ぎていく。