フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
騒いでいるからというわけではなく、伊東の容姿が視線を惹きつけるようだ。
　
——カッコよくない？
　
——なんかテレビで見たことあったような気がする。
　
囁きあっているのが聞こえた。
　
楓は、早くも来たことを後悔しはじめていた。
　
伊東なら、どう思われてもかまわないと思って、思い切ってリハビリのつもりで話にのることにしたけれど。
　
本当はその逆で、彼こそもっともデートしてはいけない相手だったのでは？と思ったからだ。
　
彼は、自分と同じ変人なのは確かだけれど周りから見たらそうではない。本性を知らなければ、カッコよくて完璧な大人の男性なのだ。
　
会って三分も経っていないのに失言を繰り返している自分とはどう考えてもアンバランス。とても一日もたなそうだ。

「やっぱりやめときます。デート」
　
もともとたいしてない自信の残留が、ゼロになったのを感じながら楓が言うと伊東が眉を寄せた。

「は？　なんで」

「だって私、なんか変なこと言ってますよね。わざとちゃかすつもりはないんですが。これじゃデートなんてとてもとても……ご迷惑をおかけすると思いますし」
　
きっと伊東の方も誘ったことを後悔しているだろう。
　
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