フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
ここで解散の方が、お互いのためにいいと思ったのだけれど。

「アホか」
　
彼はため息をついた。

「え」

「俺を誰だと思ってる？」

「は？　伊東さんです」

「そうだ。だから、お前がそういう発言するだろうことくらいは想定内だ。それなのに、今さらなにを気にしてるんだか」
　
軽く一蹴されてしまう。
　
バカにされてるし下に見られてる発言だが、不思議と腹は立たなかった。

「今さらキャンセルは許さん。なにを言ってもいいし変なことをしていいから、今日一日、余計なことは考えずにリラックスして楽しんでろ」
　
上から目線の言い方は相変わらず。けれど、どうしてかその言葉に、ガチガチだった楓の緊張がすっと解けて、心が軽くなるのを感じた。
　
側から見るとデコボコな組み合わせには違いないけれど、少なくとも彼はまったく気にしていないようだ。
　
楓のことを気遣っているというよりは、目的を達成するためなら些細なことはどうでもいいのだろう。
　
でも今はそんなドライさが心地いい。

「それより行くぞ。ちょうど時間だ」
　
有無を言わせぬようにそう言って歩き出す彼の後を楓は追った。
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