フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜

本当の彼

たっぷり二時間かけてスカイツリーを堪能すると、もう昼過ぎだった。ランチの店はもう決めてあると伊東に言われて、店先にたどり着いた楓は、目を見張り驚く。
 
とあるキャラクターの、公式カフェだったからだ。
 
なんでも吸い込むピンクのふわふわのモンスターは、楓は大好きなキャラクターで、このカフェも一度は行ってみたいと思っていた。
 
けれどもちろんそれを彼に話したことはない。

「どうして?」
 
まさか心を読まれてる?
 
読心術を使えるのは彼の方?
 
などと考える楓に伊東はこともな気に種明かしをする。

「楓が仕事中に使ってるシャーペン、このキャラだろ」

「そうですけど……それだけで?」

「マウスパッドもそうだったし、ディスクトップ横にフィギュアもあったら確定だろ」
 
カフェは人気で時間帯を指定しての事前予約が必要だった。が、そこも伊東は抜かりなかった。けれどなにより驚いたのは、その時間帯だ。
 
スカイツリーの展望台にて周りの景色に慣れた楓は、存分にその眺望を楽しんだ。
 
途中伊東が隣にいるのも忘れて、頭の中でカラスになった主人公が大空を冒険する物語を一本書き上げたくらいだ。他の人よりも大幅に見学時間が長かったという自覚がある。
 
それなのに、予約時間がちょうどよかった。
 
もしかしてスカイツリーに上った際、楓のテンションが上がって、しばらく空想世界へ飛んでしまうことくらいは予想していた?

「時間、ぴったりですね……」
 
啞然としてそう言うと、彼はふっと笑った。

「楓の行動くらい予測できると言っただろ?」
 
なるほどさすがはデートの達人だ、など感心しているうちに順番になり店の中に案内される。とたんに楓の頭の中からすべてのあれこれが吹き飛んだ。

「か、可愛い……!」
 
店内は夢のような空間だった。
 
大きな木の敵キャラが中央に鎮座している森のような空間に、ゲームのキャラがあっちこっちで動き回っているかのように配置されている。まるでゲームの世界に飛び込んだような気持ちになる。

「あ! あんなところにもいる」
 
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