フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
そんな倫の動揺をよそに叔父が彼を慰める。
「まぁ泣かないで。今は悲しくても、いつからもっといい子が現れるよ。君はまだ若いんだし。それだけカッコよかったらモテるだろう?」
「マスター! モテても彼女に愛されなければ意味がない。愛の前では人間皆平等だ。皆愛の奴隷なんだよ」
こんなところでポエムを読むなと思うけれど、倫の中の革命家がそれに激しく同意した。
そうだ、愛の前ではみんな平等、スペックなんか関係ない!
藤嶋楓は、存在感が半透明。でもメガネの奥の目はキラキラでいつまででも見ていられる。
その口から出る言葉は、予想をはるかに超えていて、いつも倫の心を揺さぶる。
彼女と一緒ならば、オムライスも楽しく食べられるし、メロンクリームソーダの宇宙を共有することができるのだ。
——マジか。
てっきり倫は、彼女からおかしな電波が出ているのだと思っていた。仮面の着脱をコントロールできずIQの低い行動に走ってしまうのは向こうの問題だと思っていたけど、まさかの自分に原因があったとは。
無意識のうちに立ち上がった倫に叔父が首を傾げた。
「ん? 倫どうした? もう帰るのか?」
「うん、やっぱりちょっと疲れたし」
カウンターに金を置いて、倫はゆらゆらを後にした。
外は冷たい風が吹き荒れて街路樹を揺らしていた。けれど少しも寒く感じない。
そんな、まさか、嘘だろ?
心の中で繰り返しながらマンションを目指す。
お前に恋心をおしえてやると言いながら、自分がおしえられてしまったということか?
なんで? なんでこんなことになってんだ?
歩きながら原因を探る。
思いあたるのは、楓のあの目だった。
はじめから気になっていた大きくて澄んだ目に、俺はやられたのだろうか。
しかも今日彼女は、メガネを外してやってきた。
俺の気持ちに気づいていて、そこをついてやろうという作戦か?
純真なふりをしながら、実はめちゃくちゃあざとくて、陰で男を食いまくっているとか?
——いやないな。
浮かんだ仮定を倫は即座に切り捨てた。
待ち合わせの際の彼女のガチガチ感はガチだった。可哀想なほど青ざめていて、なんとかそれをほぐしてやりたくて倫は軽口を叩き、素の自分からにこやかな伊東倫に戻らなくなってしまったのだ。
そしてその後の。
——エレベーターがよくなかった。
今となってはそう思う。
あそこが決定打になったのだ。どういうつもりか知らないが、やたらとじっと見つめられて、心拍数が上昇した。
女性からの視線など倫にとっては紫外線と同じはず。それなのに不覚にも動揺してしまったのだ。
彼女に対する気持ちの正体とその原因らしきものは突き止めた。それでもまったくもやもやは晴れなかった。
それどころか、ますます気分は重くなり虚しい思いに支配される。
楓を好きになったその先に、明るいものはなにもないのは確実だ。
「まぁ泣かないで。今は悲しくても、いつからもっといい子が現れるよ。君はまだ若いんだし。それだけカッコよかったらモテるだろう?」
「マスター! モテても彼女に愛されなければ意味がない。愛の前では人間皆平等だ。皆愛の奴隷なんだよ」
こんなところでポエムを読むなと思うけれど、倫の中の革命家がそれに激しく同意した。
そうだ、愛の前ではみんな平等、スペックなんか関係ない!
藤嶋楓は、存在感が半透明。でもメガネの奥の目はキラキラでいつまででも見ていられる。
その口から出る言葉は、予想をはるかに超えていて、いつも倫の心を揺さぶる。
彼女と一緒ならば、オムライスも楽しく食べられるし、メロンクリームソーダの宇宙を共有することができるのだ。
——マジか。
てっきり倫は、彼女からおかしな電波が出ているのだと思っていた。仮面の着脱をコントロールできずIQの低い行動に走ってしまうのは向こうの問題だと思っていたけど、まさかの自分に原因があったとは。
無意識のうちに立ち上がった倫に叔父が首を傾げた。
「ん? 倫どうした? もう帰るのか?」
「うん、やっぱりちょっと疲れたし」
カウンターに金を置いて、倫はゆらゆらを後にした。
外は冷たい風が吹き荒れて街路樹を揺らしていた。けれど少しも寒く感じない。
そんな、まさか、嘘だろ?
心の中で繰り返しながらマンションを目指す。
お前に恋心をおしえてやると言いながら、自分がおしえられてしまったということか?
なんで? なんでこんなことになってんだ?
歩きながら原因を探る。
思いあたるのは、楓のあの目だった。
はじめから気になっていた大きくて澄んだ目に、俺はやられたのだろうか。
しかも今日彼女は、メガネを外してやってきた。
俺の気持ちに気づいていて、そこをついてやろうという作戦か?
純真なふりをしながら、実はめちゃくちゃあざとくて、陰で男を食いまくっているとか?
——いやないな。
浮かんだ仮定を倫は即座に切り捨てた。
待ち合わせの際の彼女のガチガチ感はガチだった。可哀想なほど青ざめていて、なんとかそれをほぐしてやりたくて倫は軽口を叩き、素の自分からにこやかな伊東倫に戻らなくなってしまったのだ。
そしてその後の。
——エレベーターがよくなかった。
今となってはそう思う。
あそこが決定打になったのだ。どういうつもりか知らないが、やたらとじっと見つめられて、心拍数が上昇した。
女性からの視線など倫にとっては紫外線と同じはず。それなのに不覚にも動揺してしまったのだ。
彼女に対する気持ちの正体とその原因らしきものは突き止めた。それでもまったくもやもやは晴れなかった。
それどころか、ますます気分は重くなり虚しい思いに支配される。
楓を好きになったその先に、明るいものはなにもないのは確実だ。