皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
けれど──私は違った。

私はただ、淡々とその言葉を受け止めた。

喜ぶでもなく、驚くでもなく。

無表情のまま、深く頭を下げることしかできなかった。

きっと、あの執務試験で一人落とされることになっていたら──選ばれなかったのは、間違いなく私だったに違いない。

マリアンヌ皇女には華がある。

エミリアには知性と安定感がある。私は……?

私は、首一枚で助かっただけなのだ。

その事実が、心に冷たい影のようにのしかかる。

最終試験に進めたのは、ただの「猶予」なのだと、私は自分に言い聞かせた。

講堂からの帰り道、なぜか私の馬車だけがまだ到着していなかった。

他の候補者たちはすでに帰路についたというのに、私は王宮の大玄関で、ひとり待ち続けていた。

こういうことは、今に始まったことではない。

そう思って自分を納得させようとしていた、その時だった。

「疲れているだろう。王宮の馬車で君を送る。」
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