皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「帰り道、何かあればお父上に顔向けできませんよ。」

そう穏やかに告げたのは、近衛のダンカンだった。

その一言が決め手となり、私は王宮に泊まることを受け入れた。

案内されたのは、アレシオ殿下の親しい友人が訪れた際に使われるという特別室。

重厚な調度品に彩られた、気品ある空間だった。

「このようなお部屋をご用意いただき、感謝の言葉もありません。」

そう告げる私の声は、どこか上ずっていた。

なぜなら、この部屋のすぐ隣には──殿下の私室があると聞いたから。

扉一枚の向こうに、あの人がいる。そう思うだけで、胸が高鳴る。

これは、ただの“宿泊”でしかない。

そう分かっているのに、なぜか気持ちは落ち着かず、鼓動が速まっていくのを感じていた。

侍女が差し出したナイトウェアを手に、私は戸惑った。

「王妃様がこれを着て寝るようにと。」

「……え? 王妃様が?」と繰り返したその時、控室の扉が開いた。
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