皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
穏やかな声に目を開けると、彼が優しく微笑んでいた。私も自然と笑みを返す。

身支度を整え、ドレスに着替えた私は、迎えの馬車に乗り込んだ。けれど、出発の直前──

「待ってくれ。」

そう言ってアレシオ殿下がわざわざ正装に着替えて、馬車に乗り込んできたのだ。

「お父上に、許しを得る。」

その真剣な眼差しに、私は一瞬息を呑んだ。

「……結婚の許しなら、無用です。」

私は静かに答えた。

「妃に選ばれるのなら、それは国が認めるもの。誰の許しもいりません」

でも、きっとアレシオ殿下はそれだけでは満足しない。

形式だけではなく、私自身を一人の女性として迎え入れたい──その強い意志が、彼の瞳から伝わってくる気がした。

屋敷に着くと、玄関にはお父様が立っていた。

目の下にはくっきりとしたクマが浮かび、徹夜で私を待っていたことが一目で分かった。

「セラフィーヌ!」

怒声と共に、拳が振り上げられる。──殴られる。
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