皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
そして次は──私の番だった。

高鳴る心臓の音が、まるで太鼓のように響く。

だが、逃げることなどできなかった。ここまで来たのだ。私は負けるわけにはいかない。

私は歩み出て、ゆっくりと顔を上げる。

前には、審査員、貴族、そして数えきれないほどの民衆たち。

「私が王妃になったあかつきには……!」

だが──その先の言葉が、出てこなかった。

何を言おうとしていたのか、自分でも分からなくなる。

胸の内には、やりたいことがたくさんあったはずだ。

福祉の拡充、医療の整備、孤児院の支援……。

けれど、さっきのような熱狂の中では、それらがまるで小さなことのように思えてしまった。

私の声は、この大勢の前で、届くだろうか。

私の想いは──王妃にふさわしいだろうか。

一瞬、心が沈む。だがその沈黙の中にこそ、私だけの言葉があると、信じたかった。
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