皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
その瞬間、私の胸にあった堰が切れたように、言葉が溢れ出す。

「私は……ずっと、あなたの妃になるように教えられ、育てられてきました。」

幼い頃から続けてきた礼儀作法、舞踏、歴史、政務の勉強。すべては、"いつか皇太子妃になるため"だった。

「でもそこには、私自身の心なんて……ありませんでした。」

アレシオ殿下の顔が、かすかに曇る。

「婚約の話が来た時も……ただ、これまでの教育が無駄ではなかった、そう思って安心しただけでした。喜びでも、恋でも、ありませんでした。」

静まり返る会場。誰もが私の言葉に耳を傾けていた。

「でも、公募になって──あなたの優しさに触れたとき。」

私はアレシオ殿下を見つめ返す。

彼の瞳が揺れている。その揺らぎが、私の心にそっと重なった。

「初めて……あなたという“人”を見たんです。」

アレシオ殿下が、目を見開いた。
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