皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
いいえ、きっと……とっくに知っている。

胸が締め付けられた。

また私達の想いが、引き裂かれてしまうかもしれない――。

お妃教育で王宮を訪れていた私。

帰り際、回廊を歩いていると、大広間から鋭い声が響いた。

「もう一度、皇太子妃の選定をやり直すべきです!」

「ならん! 一度決めたからには覆さない!」

聞き慣れた低い声――アレシオだった。

相手は重臣のひとりで、声色には苛立ちと冷笑が混じっている。

「どうしてセラフィーヌ様なのでしょうか。」

胸がズキリと痛む。壁の陰からそっと覗くと、アレシオが真っ直ぐに相手を見据えていた。

「セラフィーヌは知性、礼儀、愛情、すべてを兼ね備えている。王妃に相応しい令嬢だ。」

「……愛情だけに、とらわれ過ぎてはいませんか?」

その一言が刃のように心に刺さる。

愛情だけ――私の存在を軽く否定する響き。
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