皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
私は何も言えず、ただ唇を噛みしめた。

──これが、アレシオ殿下を巡る戦い。

美しさでも、家柄でも、そして……愛の強さでも、譲れない想いのぶつかり合い。

私は、震える拳をそっと握りしめた。

(私も、臆病なままではいられない)

そのときだった。マリアンヌ皇女はわずかに微笑んだ。

「あなたの覚悟、見せてもらうわ。けれど……覚えておいて。私は本気。誰にも譲らない覚悟で来ているの。」

そう言い残し、彼女は静かに背を向けた。

けれどその背中は、凛とした女王のように、まばゆいほどに美しかった。

(私も──この恋を、手放さない)

雨上がりの石畳に光が差し込む中、私もまた歩き出した。

その先にあるのは、栄光か、それとも──敗北か。
< 60 / 234 >

この作品をシェア

pagetop