皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「……喜んで。」

私もまた、そっと手を差し出す。

その瞬間、楽団が奏でる舞踏曲が響き始めた。

(ああ……最初の一組に、選ばれたのは──私。)

静寂と注目が一気に集まる。

アレシオ殿下の腕が私の腰に添えられ、私はその動きに身を任せる。

(大丈夫……落ち着いて。スクールで何度も踊った……でも、相手は皇太子。)

殿下は驚くほど自然なリードをしてくれた。

まるで私の心の動きを先読みしているかのように。

──まっすぐな眼差し。
──優雅なステップ。
──息を合わせるたび、心が熱を帯びていく。

そして、私たちの一曲が、これから踊る全ての評価の「基準」となる。

(私のダンスが、試験の基準に……!)

緊張が走る。

けれど、アレシオ殿下の手の温もりが、「大丈夫」と言ってくれているようで──
私は、少しだけ笑った。

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