皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
殿下の視線が、ゆっくりと向いた。

「……マリアンヌ皇女。」

やはり、という空気がその場を包む。

マリアンヌ皇女は小さく頭を下げ、静かに微笑んだ。

彼女の優雅さと立ち居振る舞いは、まさに“王族の鑑”だった。

私の手は、無意識に強く握られていた。

次こそは、自分の名が呼ばれる──

そう信じて、呼吸を整える。

「次に名を挙げるのは──」

アレシオ殿下の声が、また胸を貫いた。

「──エミリア・ロザリンド嬢。」

その瞬間、周囲がふわっとざわめいた。

エミリアが小さく一礼する。

その所作までもが、完璧だった。

私は──呼ばれていない。

あと、ひとつ。

リディアが横で、唇を噛み締めているのが見えた。

そしてもう一人の令嬢も、顔を伏せている。

残る一枠──三分の一の可能性。

でも、今の私は、自信がなかった。

「最後に名前を呼ぶのは──」

アレシオ殿下の瞳が、私をまっすぐ捉えた。
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