皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「君は、ただの義務で応募したのだと……」

耳元で囁かれる声に、胸が高鳴る。

「自分にそう言い聞かせていたんだ。でないと、君を愛してしまいそうで怖かった。」

低く掠れた声が、私の心に染み込んでいく。

「きっと結婚しても、君の心は俺には向かない。そう思っていた。」

私は、アレシオ殿下の胸の中で、そっと首を横に振った。

「正直に申し上げますと……」

声が震える。でも、伝えたい。いや、伝えなければ。

「私は……アレシオ殿下に、心惹かれています。」

ようやく、言葉にできた。

愛しているとはまだ言えないけれど、これは紛れもない、私の本心だ。

すると、殿下がゆっくりと私の顔を覗き込んだ。

真剣なその眼差しは、まるで私の心の奥底まで見透かすように、真っ直ぐで──美しかった。

「俺を、愛してくれるか?」

コクンと大きく頷いた。

しばらくの間、私とアレシオ殿下は抱きしめ合って、同じ時を過ごした。
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