皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「えっ……?」

戸惑う私の前で、エミリア嬢は静かに続けた。

「まるで、本当に皇太子妃として執務を担っているかのようだったの。殿下は厳しく、理詰めで進めてこられて……そのうち私、思わず口答えしてしまいそうになって。」

その声には、明らかな後悔が滲んでいた。両手で顔を覆いながら、彼女は呟いた。

「執務が上手く進まないどころか、殿下に反論しようとするなんて……私、妃の器じゃないわ。失格よ……」

エミリア嬢がここまで取り乱す姿を見るのは、初めてだった。

完璧な優等生だと思っていた彼女も、プレッシャーの中で苦しみ、傷ついていたのだ。

その姿に、私の胸にも不安がよぎる。次は、私の番だ──。

「では、セラフィーヌ嬢。共に参りましょう。」

試験官の言葉に促され、私は静かに頷いた。

「はい」と返す声が震えていないことに、ほっとする。

長い王宮の廊下を進む。
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