近くて、遠い、恋心
恋との決別
見慣れたリビングに灯る暖かな照明の光とは正反対に室内は重い空気に満たされている。ダイニングテーブルの上に置かれたミネラルウォーターの入った二つのグラスは温くなり、壁面に水滴を零していた。
玄関に入ってすぐ自室へと駆け込めば良かったと後悔しても遅い。喉の渇きを満たすためリビングへと向かい、ソファに座り動かない理人を見つけたのが運の尽きだった。
まさか真っ暗なリビングに理人がいるなんて思わない。電気をつけた時、叫び声をあげなかっただけ褒めて欲しい。
虚な目をした理人から『話がある』と言われ、ダイニングテーブルに移動したのを最後に、時間だけが流れていく。
一言も言葉を発さず俯く理人の表情は私から見えない。きっと佐々木さんとの関係を追求されるのだろう。でも数十分、怒るでもなく、黙り込む理人の考えがわからず、恐怖だけが募っていく。先に耐えられなくなったのは私の方だった。
「話がないなら、もう行くね」
「……なんでアイツと逃げた?」
「えっ……」
顔をあげた理人と視線がかち合う。鋭い視線をよこす理人の瞳の中には怒りの炎が見える。それなのに、なぜそんな辛そうな顔をするのだろうか。
まるで恋人に裏切られ、心をズタズタに切り裂かれた男のような表情をする理人を見つめ、心が罪悪感で軋む。
恋心を抱いていても、私にとって理人は義兄であって恋人ではない。それは理人も同じで、彼にとっても私は義妹でしかない。だからこそ、なぜ彼がそんな顔をするのかわからない。
得体の知れない罪悪感に苛まれ、理人と目を合わせているのも耐えられなくなる。でも、視線を外すし逃げた私を許さないとでも言うように理人の追求は続く。
「あの男……、仕事仲間って言ってたよな。なら、どうしてアイツと逃げたんだ? やましい関係じゃなければ逃げる必要なんてなかったよな?」
「やましい関係って……、佐々木さんとは、そんな関係じゃない! 本当に仕事仲間で」
「じゃあ、逃げる必要なんてなかったよな」
玄関に入ってすぐ自室へと駆け込めば良かったと後悔しても遅い。喉の渇きを満たすためリビングへと向かい、ソファに座り動かない理人を見つけたのが運の尽きだった。
まさか真っ暗なリビングに理人がいるなんて思わない。電気をつけた時、叫び声をあげなかっただけ褒めて欲しい。
虚な目をした理人から『話がある』と言われ、ダイニングテーブルに移動したのを最後に、時間だけが流れていく。
一言も言葉を発さず俯く理人の表情は私から見えない。きっと佐々木さんとの関係を追求されるのだろう。でも数十分、怒るでもなく、黙り込む理人の考えがわからず、恐怖だけが募っていく。先に耐えられなくなったのは私の方だった。
「話がないなら、もう行くね」
「……なんでアイツと逃げた?」
「えっ……」
顔をあげた理人と視線がかち合う。鋭い視線をよこす理人の瞳の中には怒りの炎が見える。それなのに、なぜそんな辛そうな顔をするのだろうか。
まるで恋人に裏切られ、心をズタズタに切り裂かれた男のような表情をする理人を見つめ、心が罪悪感で軋む。
恋心を抱いていても、私にとって理人は義兄であって恋人ではない。それは理人も同じで、彼にとっても私は義妹でしかない。だからこそ、なぜ彼がそんな顔をするのかわからない。
得体の知れない罪悪感に苛まれ、理人と目を合わせているのも耐えられなくなる。でも、視線を外すし逃げた私を許さないとでも言うように理人の追求は続く。
「あの男……、仕事仲間って言ってたよな。なら、どうしてアイツと逃げたんだ? やましい関係じゃなければ逃げる必要なんてなかったよな?」
「やましい関係って……、佐々木さんとは、そんな関係じゃない! 本当に仕事仲間で」
「じゃあ、逃げる必要なんてなかったよな」