近くて、遠い、恋心
「ずっと、私たちに隠れて愛し合っていたのか?」
「父さん、いやらしい言い方はやめてくれ! ずっと両親に振り回されて、想いを殺しつづけるしかなかった俺たちに言う言葉じゃない!!」
「はっ? どういうことだ?」
「俺と夏菜は、父さんと母さんが再婚する前、高校生の時にお互い恋に落ちたんだ。でも、親の再婚で兄妹になってしまい想いを告げることも出来ず、恋心を隠し今まで過ごして来た。それが夏菜の海外行きが決まって、やっとお互い気持ちを伝えることが出来た。もうこれ以上、俺たちを振り回さないでくれ。俺も、夏菜も、子供じゃない。自分たちの未来は、自分たちで決める。だから、お願いだ。夏菜との関係を認めてくれ」
スッと両親へと頭を下げた理人を見つめ、夏菜もまた頭を下げる。
「どうか、お願いします。理人と二人で生きていきたいの」
母はきっと許してはくれない。でも、それでいい。
理人と二人で生きて行きたい。
それが、母に伝えられる今の"わたし"の本当の気持ちだから。
長い、長い沈黙が落ちる。
いつの間にか止んだ母の泣き声と、沈黙をやぶる義父の大きなため息に顔をあげれば、私を見つめる義父の優しい眼差しとかち合った。
「母さんを寝かせてくる。二人はここで待っていなさい」
顔を伏せ義父の身体にもたれ歩く母の表情は見えない。理人と私との関係を知っても、泣きわめくことも、罵倒することもせず立ち去る母の心境はわからない。ただ、認めてはくれないだろうことだけはわかる。
やっぱり、たった一人の肉親に認められないのは辛いな。
嫌いな母でも心の奥底では愛しているのだ。逃げ出そうと思えば逃げ出せたのに、逃げなかったのは母の愛を欲していたから。
過去の"わたし"じゃなくて、今の"わたし"を愛してもらいたかった。でも、その望みはもう叶わない。
理人の肩へと頭をもたれ、つぶやく。
「理人……、ずっと愛してくれる?」
「あぁ、ずっと愛している」
わずかに唇にふれた温もりにまぶたを閉じれば、涙の雫が頬を伝い落ちていった。
「父さん、いやらしい言い方はやめてくれ! ずっと両親に振り回されて、想いを殺しつづけるしかなかった俺たちに言う言葉じゃない!!」
「はっ? どういうことだ?」
「俺と夏菜は、父さんと母さんが再婚する前、高校生の時にお互い恋に落ちたんだ。でも、親の再婚で兄妹になってしまい想いを告げることも出来ず、恋心を隠し今まで過ごして来た。それが夏菜の海外行きが決まって、やっとお互い気持ちを伝えることが出来た。もうこれ以上、俺たちを振り回さないでくれ。俺も、夏菜も、子供じゃない。自分たちの未来は、自分たちで決める。だから、お願いだ。夏菜との関係を認めてくれ」
スッと両親へと頭を下げた理人を見つめ、夏菜もまた頭を下げる。
「どうか、お願いします。理人と二人で生きていきたいの」
母はきっと許してはくれない。でも、それでいい。
理人と二人で生きて行きたい。
それが、母に伝えられる今の"わたし"の本当の気持ちだから。
長い、長い沈黙が落ちる。
いつの間にか止んだ母の泣き声と、沈黙をやぶる義父の大きなため息に顔をあげれば、私を見つめる義父の優しい眼差しとかち合った。
「母さんを寝かせてくる。二人はここで待っていなさい」
顔を伏せ義父の身体にもたれ歩く母の表情は見えない。理人と私との関係を知っても、泣きわめくことも、罵倒することもせず立ち去る母の心境はわからない。ただ、認めてはくれないだろうことだけはわかる。
やっぱり、たった一人の肉親に認められないのは辛いな。
嫌いな母でも心の奥底では愛しているのだ。逃げ出そうと思えば逃げ出せたのに、逃げなかったのは母の愛を欲していたから。
過去の"わたし"じゃなくて、今の"わたし"を愛してもらいたかった。でも、その望みはもう叶わない。
理人の肩へと頭をもたれ、つぶやく。
「理人……、ずっと愛してくれる?」
「あぁ、ずっと愛している」
わずかに唇にふれた温もりにまぶたを閉じれば、涙の雫が頬を伝い落ちていった。