近くて、遠い、恋心
「理人、二人の関係を認めることは出来ない。ただ、夏菜さんが海外へ行き離れてなお二人の想いが変わらなければ、その時は認めよう。その間、夏菜さんに会うことを禁じるが、理人、お前は出来るか?」
「あぁ、もちろん。何年、我慢したと思ってんだ。あと数年の我慢なんて、我慢のうちにも入らねぇよ」
挑発的な目をした義父を挑戦的な目をして見据える理人は、なんだかいつもより子供っぽく見える。理人と義父の関係まで悪くなることを恐れていた私がホッと胸を撫で下ろしていると義父に話かけられた。
「夏菜さん、気づいてやれなくてすまなかった。理人としばらく会えなくなるけど、夏菜さんは大丈夫かな?」
心は散々に乱れているだろうに、義理の娘の心情にも気を配る義父の懐の深さには感謝しかない。
「大丈夫です。私も一人になって色々と整理したいですし、海外渡航が良いきっかけになればと思っています。ただ、母のことだけが心配で……、母の様子は?」
「ショックは受けているみたいだよ。でも、大丈夫じゃないかな、元々は芯の強い人だしね」
「芯の強い人?」
義父の言葉に首を傾げる。
私の知る母は心配性で、束縛が強く、すぐ泣き落としをして関心をひく、卑怯で、弱い人間に写っていた。義父が形容する『芯の強い人』とは真逆の性格をしているようにしか思えない。
「不思議かい?」
「はい。母の性格からは想像出来ません」
「まぁ、夏菜さんがそう言うのも無理はないかな。真理子さんは色んな顔を使い分けられるからね。流石、銀座でナンバーワン張っていただけのことはあるよ」
「銀座のナンバーワンって……」
「あぁ、もしかして知らなかったのか。真理子さんに怒られるな。でも、夏菜さんには、彼女の真実を知っておいて欲しいと思うんだ。娘を守るために必死で闘ってきた真理子さんの過去をね」
そう言って懐かしそうに目を細め話し出した母の過去は、私の想像を超え遥かに過酷なものだった。
「あぁ、もちろん。何年、我慢したと思ってんだ。あと数年の我慢なんて、我慢のうちにも入らねぇよ」
挑発的な目をした義父を挑戦的な目をして見据える理人は、なんだかいつもより子供っぽく見える。理人と義父の関係まで悪くなることを恐れていた私がホッと胸を撫で下ろしていると義父に話かけられた。
「夏菜さん、気づいてやれなくてすまなかった。理人としばらく会えなくなるけど、夏菜さんは大丈夫かな?」
心は散々に乱れているだろうに、義理の娘の心情にも気を配る義父の懐の深さには感謝しかない。
「大丈夫です。私も一人になって色々と整理したいですし、海外渡航が良いきっかけになればと思っています。ただ、母のことだけが心配で……、母の様子は?」
「ショックは受けているみたいだよ。でも、大丈夫じゃないかな、元々は芯の強い人だしね」
「芯の強い人?」
義父の言葉に首を傾げる。
私の知る母は心配性で、束縛が強く、すぐ泣き落としをして関心をひく、卑怯で、弱い人間に写っていた。義父が形容する『芯の強い人』とは真逆の性格をしているようにしか思えない。
「不思議かい?」
「はい。母の性格からは想像出来ません」
「まぁ、夏菜さんがそう言うのも無理はないかな。真理子さんは色んな顔を使い分けられるからね。流石、銀座でナンバーワン張っていただけのことはあるよ」
「銀座のナンバーワンって……」
「あぁ、もしかして知らなかったのか。真理子さんに怒られるな。でも、夏菜さんには、彼女の真実を知っておいて欲しいと思うんだ。娘を守るために必死で闘ってきた真理子さんの過去をね」
そう言って懐かしそうに目を細め話し出した母の過去は、私の想像を超え遥かに過酷なものだった。