近くて、遠い、恋心
「うん、笑顔で別れよう。でも、最後にお願いを聞いてくれる?」
「あぁ、どんな願いだって叶えてやる」
「理人、お願い。忘れられない、キスをし――」
最後の言葉は理人の唇に奪われ消えた。
二人の唇が深く、深く交わる。それはまるで、これから訪れる長い、長い別れの時を埋めるかのように、そして惜しむかのように切なく絡む。
瞳から流れ出した涙が頬を伝い、次から次へと落ちていく。
泣かないって決めたのに、心は理人との別れに涙を流す。でも、最後くらい……
「理人、愛している。ずっと、ずっと愛してる」
綺麗に笑えたかな。きっと、笑えた。
涙の跡をぬぐう理人の顔にも、切ないほどにまぶしい太陽のような笑顔が浮かんでいる。
大好きな理人の笑顔。
忘れたくない。いいえ、絶対に忘れない。
「夏菜。過去も、未来も、お前だけを愛していると誓う。だから……」
ギュッと抱きしめられた腕の強さも、切ないほどに胸がキュンとなる理人の香りも、心が満たされる太陽のような笑顔も忘れない。
「……忘れないよ。絶対、忘れない。理人の全てを忘れない。だから、理人もわたしのこと忘れないで」
「あぁ、絶対に忘れない」
キツイくらいの抱擁が今は嬉しい。でも、別れは無情にも近づいてくる。
最後の抱擁を交わし、理人と二人出国ロビーへと向かい歩く。
残りわずかな時間を惜しむかのように、手を繋ぎゆっくりと歩く私の耳に信じられない声が飛び込んできた。
私の名を呼ぶ母の声に足が止まる。
勝手に流れ出した涙を拭きもせず、振り返った先は滲んでよく見えない。でも、母の声を聞き間違えるはずがなかった。
「お母さん……」
近づいて来た人影は間違いなく母と義父だ。でも、涙があふれ言葉が出ない。
「本当、夏菜は泣き虫なんだから。本当に行くのね?」
言葉にならない私は母の言葉にただただ頷く。そんな私を母が抱き寄せてくれた。
「いつの間にか、大きくなっていたのね。自分の人生を決められるくらい、大人になっていたことにも気づかなかった。夏菜……、本当にごめんなさい。自由に生きなさい。でも、これだけは覚えておいて。あなたが何歳になっても、夏菜は母さんの宝物で守るべき存在なのよ」
あふれ出した涙はとめどなく流れ嗚咽がもれる。そんな子供のように泣きじゃくる私を母は呆れもせず優しく頭を撫で続けてくれた。
家族と離れ一人、出国ゲートをくぐる。後ろを振り向けば、理人がいて、母がいて、義父がいて、皆、笑顔で手を振ってくれている。
家族と離れ、知らない土地で一人生きていくのは怖い。でも、次に家族に会うとき私は一回りも、二回りも成長している。そう信じて新しい未来へと今、歩き出す。
そして、理人の隣りに立つに相応しい大人の女性になったとき、本当の意味で歪な家族は、本物の家族になれるのかもしれない。
「あぁ、どんな願いだって叶えてやる」
「理人、お願い。忘れられない、キスをし――」
最後の言葉は理人の唇に奪われ消えた。
二人の唇が深く、深く交わる。それはまるで、これから訪れる長い、長い別れの時を埋めるかのように、そして惜しむかのように切なく絡む。
瞳から流れ出した涙が頬を伝い、次から次へと落ちていく。
泣かないって決めたのに、心は理人との別れに涙を流す。でも、最後くらい……
「理人、愛している。ずっと、ずっと愛してる」
綺麗に笑えたかな。きっと、笑えた。
涙の跡をぬぐう理人の顔にも、切ないほどにまぶしい太陽のような笑顔が浮かんでいる。
大好きな理人の笑顔。
忘れたくない。いいえ、絶対に忘れない。
「夏菜。過去も、未来も、お前だけを愛していると誓う。だから……」
ギュッと抱きしめられた腕の強さも、切ないほどに胸がキュンとなる理人の香りも、心が満たされる太陽のような笑顔も忘れない。
「……忘れないよ。絶対、忘れない。理人の全てを忘れない。だから、理人もわたしのこと忘れないで」
「あぁ、絶対に忘れない」
キツイくらいの抱擁が今は嬉しい。でも、別れは無情にも近づいてくる。
最後の抱擁を交わし、理人と二人出国ロビーへと向かい歩く。
残りわずかな時間を惜しむかのように、手を繋ぎゆっくりと歩く私の耳に信じられない声が飛び込んできた。
私の名を呼ぶ母の声に足が止まる。
勝手に流れ出した涙を拭きもせず、振り返った先は滲んでよく見えない。でも、母の声を聞き間違えるはずがなかった。
「お母さん……」
近づいて来た人影は間違いなく母と義父だ。でも、涙があふれ言葉が出ない。
「本当、夏菜は泣き虫なんだから。本当に行くのね?」
言葉にならない私は母の言葉にただただ頷く。そんな私を母が抱き寄せてくれた。
「いつの間にか、大きくなっていたのね。自分の人生を決められるくらい、大人になっていたことにも気づかなかった。夏菜……、本当にごめんなさい。自由に生きなさい。でも、これだけは覚えておいて。あなたが何歳になっても、夏菜は母さんの宝物で守るべき存在なのよ」
あふれ出した涙はとめどなく流れ嗚咽がもれる。そんな子供のように泣きじゃくる私を母は呆れもせず優しく頭を撫で続けてくれた。
家族と離れ一人、出国ゲートをくぐる。後ろを振り向けば、理人がいて、母がいて、義父がいて、皆、笑顔で手を振ってくれている。
家族と離れ、知らない土地で一人生きていくのは怖い。でも、次に家族に会うとき私は一回りも、二回りも成長している。そう信じて新しい未来へと今、歩き出す。
そして、理人の隣りに立つに相応しい大人の女性になったとき、本当の意味で歪な家族は、本物の家族になれるのかもしれない。