近くて、遠い、恋心
 飛行機を降り、入国ゲートへと進む。カツカツと靴音を鳴らし歩けば肩まで伸びた黒髪がしなやかに揺れる。
 数年ぶりに日本の地に足を踏み入れた私は、はやる気持ちを抑え入国手続きを終え、到着ロビーへと向かった。

 早く会いたい。
 早く会って、抱きついて、想いの丈を理人にぶつけたい。
 
 理人との再会が待ち遠しく、我慢出来なくなった私は、子供のように走り出す。

 アメリカで苦労しながらもプロジェクトを成功させ、日本を出立する前よりも精神的にも、肉体的にも成長した。
 理想とする大人の女性に近づいていると胸を張って言える。でも、心はあの時のまま、こんなにも理人を求めている。

 子供みたいに走ってきたら、理人は呆れるかな。そんな私も含めて好きだと言ってくれるかな。
 会えなかった年月が心を不安にさせる。でも、きっと大丈夫。あの大好きな笑顔で迎えてくれる。

 パッと開いた自動扉の奥、一人の男性に目が吸い寄せられた。黒髪を後ろへと流し、記憶にある理人よりも大人びた彼は、私を見つけると満面の笑顔を浮かべてくれた。
 あの日と変わらない太陽のような笑顔。あの笑顔に私は恋をした。

 理人めがけて走り出す。恥も、外聞もなく、恋しい人の元へと走り、子供のように彼の胸へと飛び込んだ。

 別れたあの日と同じ理人の匂いに目頭が熱くなる。理人の胸へと頬を寄せ、ギュッと抱きつけば背中へと回された手に頭を優しく撫でられた。

 恋心を封印したあの日、長かった黒髪はばっさり切った。もう髪を伸ばすことはないと思っていたのに、理人と奇跡みたいな恋をして、また伸ばしたいと思った。
 優しく髪を撫でられ、宝物のように抱き寄せられる。

「夏菜……、もう離さない」

 ギュッと抱きしめられた腕の強さと、耳元でささやかれた言葉に切ないほどの恋心があふれ出す。

 ずっと、ずっと会いたかった。
 会いたくて、会いたくてたまらなかった。
 やっと理人の隣りで歩いていける。

「理人。昔も、今も、ずっと愛している。もう、絶対に離れない」

 空白の時間をうめるかのように、二人の唇が深く、深く重なる。
 愛を確かめ合う二人は気づかない。そんな二人を祝福するかのように、母と義父が優しい目をして遠くから見つめていたなんて。


【完】
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