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16 これからもずっと一緒に



「五月くん、こんなところにいたんだ」

 夕陽が眩しいくらいに辺りを明るく照らしていて、そんなグラウンドの片隅。
 鉄棒に寄りかかるようにして、五月くんはぼうっとグラウンドを見ていた。

 私に気が付くと、いつもみたいに明るい笑顔を浮かべる。

「よっ!桜彩!依頼ご苦労さん」
「うん」

 私は五月くんの横に並んで、鉄棒に寄りかかる。


「五月くん、だったんだね」


 五月くんはなにも言わず、私の言葉を静かに聞いていた。

「今回の相談をくれた陽斗くんが、会いたがっているひと」



 今から少し前のこと。
 私たちは相談主の陽斗くんからお話を聞いて、最後にその会いたいひとの名前を聞いたんだ。

「あ、そうだ!その会いたい友達の子の名前って、聞いてもいい?」
「あ、はい!もちろんです!名前は、旭日 五月って言います」

 陽斗くんの言葉に、私たちは目をぱちくりさせたのだった。



「ばれたか」
 五月くんは少し困ったように笑う。

「陽斗くん、五月くんに会いたがってたよ」
「うん……そうみたいだな……」
「どうして会ってあげないの?」

 そう尋ねると、五月くんはまた困ったように笑う。

「なんつーか、合わせる顔がないんだ」
「え?」
「陽斗から話は聞いてると思うけど、あいつが事故に遭ったときさ、俺、助けてあげられなかったんだ。車がすごい勢いでこっちに近付いてきてるの、わかってたのに……」

 五月くんはの表情が苦しそうにゆがむ。
 きっとそのときのこと、思い出してるんだ。

「当時は今みたいに高速移動の能力もなくて、陽斗を助けられなかった……。自分がもっと早くに動けていれば助けられたって、すげー悔やんだよ。この能力は、陽斗が事故に遭ってから目覚めたんだ。皮肉なもんだよな……」

 五月くんは自嘲気味に笑う。

「陽斗は怪我のせいで大好きなバスケを諦めることになってしまった。俺は陽斗とバスケをするのが好きだったから、陽斗のいないバスケになんの意味もないって、クラブチームもやめたんだ」

 五月くんの話に、相づちを打たずじっと耳を傾ける。

「リハビリをがんばる陽斗を見てると、どうしても辛くて、俺はお見舞いにいけなくなった。なんで事故に遭ったのが陽斗だったんだろうって、俺だったらよかったのにって、何度も思ったよ」
「それは違うよ!」

 私は思わず口を挟んでしまう。
 自分が代わりになれたらよかったなんて考えはおかしい。

「……そんでたまたま父親の転勤が決まって、そのまま引っ越すことになったって話。陽斗を助けることもできず、応援することもできずに逃げ出した俺が、合わせる顔なんてないだろ?」

 五月くんの笑顔に、私はようやく理解した。
 そうか、そういうことだったんだ。

 五月くんが持つ、強すぎる正義感。

 困っている誰かのためなら、自分の身を犠牲にしてでも助けようとする気持ち。

 それはきっと、過去に陽斗くんを助けられずに後悔し続けているからなんだ。

「そういうわけだから……」

 話しを打ち切ろうとする五月くんの腕を、私はとっさにつかんだ。

「桜彩?」
「五月くん、ちゃんと陽斗くんと会って話した方がいいよ」
「え?いや、だから言っただろ?俺には陽斗に会う資格なんて……」
「あるよ!本当は五月くんだって陽斗くんと会って話がしたいと思ってるんじゃないの?陽斗くん、言ってたよ。仲直りがしたいって、ひどいこと言っちゃったからって!」

 五月くんの瞳が揺らぐ。

 きっと本当は五月くんだって陽斗くんに会いたいんだ。
 でも素直になれないだけ。

「日下部先輩とゆいこ先輩の相談のとき、五月くんはちゃんと仲直りした方がいいと思って、ふたりを会わせたんじゃないの?」

 五月くんは日下部先輩の話を聞いて、すぐに教室を飛び出してゆいこ先輩のもとへと走った。
 私はそれが、五月くんの本当の気持ちだと思ったんだ。


『友達同士はやっぱり、仲良くあるべきだろ』


 私もそう思うよ。
 だからこそ、五月くんと陽斗くんにも仲良しに戻ってほしいんだ。

「陽斗くん、明日、みどり公園で待ってるって」
「え……?」
「みどり公園、五月くんも知ってるでしょ?二人でよく遊んだ場所だって、陽斗くん言ってたよ」
「……ああ、うん。覚えてるよ」
「じゃあ、また明日ね!」

 尚も迷っているような表情を見せた五月くんに背を向けて、私は走り出した。

「……きっと、大丈夫……!」

 私はぎゅっと自身の手を握りしめる。
 なぜだか、そんな気がするから。



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