売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
年老いた男が女を買う──その事実に、皆が一歩引いているのだ。

──でも、誰も止めてはくれない。

そして。

誰かが、無責任に放った。

「だったら……試しに、この女を抱けるか、見せてみろよ」

静まり返った空間に、その言葉は異様なほどはっきり響いた。

空気が凍る。

私は息を呑み、目を見開いた。

身体の震えが止まらない。

──“試す”?
この場で?
今すぐ、ここで? 見られながら──?

ぞくりと背中を這う冷気。

私は、ベッドのシーツを掴み、口を開こうとしたが──声が出なかった。

このまま、この地獄のような場で、私は“試される”の……?

助けて。
誰か。
お願い……誰か……。

そんな祈りにも似た願いが、胸の奥に溜まりかけたとき──

一人の男が、静かに立ち上がった。

その目は、鋭く、どこまでも冷ややかで。

けれど──ほんのわずかに、私を見つめていた。
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