売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「クライブ……」

乾いた唇から絞り出すように名を呼ぶ。

見上げた彼の目が、真っ赤に染まっていた。

「あなたの胸の中で……逝きたい。」

それは、最後の願い。最愛の人に抱かれて旅立てるなら、本望だった。

「……そんなことを言うな!!」

クライブの怒りと悲しみが混じった叫びが、部屋中に響いた。

「許さない……君が死ぬなんて、絶対に許さないからな!!」

泣きながら叫ぶクライブに、私はもう一度だけ、微笑みかけた。

それだけが、私にできることだった。

何を思ったのか、クライブはそっと立ち上がると、棚の中から刺繍糸を手に取った。

器用な手つきでくるくると巻き、柔らかな糸で小さな輪を作る。

「クラディア。」

彼はベッドサイドに腰を下ろし、私の手を取った。

「逝くのは、まだだ。……俺と結婚してからにしてくれ。」

ぼんやりしていた意識が、彼の言葉で一気に引き戻される。
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