売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「……クライブ。頼んだぞ。」

短くそう言い残して、扉をそっと閉めた。

残された部屋には、クライブの息遣いと、私のかすかな呼吸音だけが残る。

「クラディア……ずっと、側にいるから。」

その言葉が、ゆっくりと私の胸に沁み込んでいく。

痛みで霞んでいた世界に、ほんの少し、光が射した気がした。

そして翌朝、静けさを破るように、扉がノックされた。

お医者様が診察のためにやってくる。

「クラディアの容態は……?」

クライブの問いに、お医者様は言葉を探すように沈黙したまま、わずかに首を横に振った。

「今夜が……山場かと。」

その瞬間、クライブは膝から崩れ落ちそうになるほどの衝撃を受けた。

だが、すぐに私のもとに駆け寄り、震える腕で私の身体を抱きしめた。

「嫌だ……! クラディア……!」

彼の腕の中で、私は小さく息を吐いた。

ああ……私はこのまま、逝ってしまうのだろうか。
ならばせめて――。
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