売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「公爵家クライブ・オーエンを、夫とし……」

世界が霞んでいく。

視界がぼやけて、彼の顔も、涙ににじんだ。

「これを敬い、支え……」

喉がつまる。息が切れる。
でも──

「もう少しだ。頑張れ!」

クライブの声が、闇の中から届いた。

私は震える唇を動かした。

「……一生……愛しぬくことを誓います。」

それは、風前の灯のようにか細い言葉だった。

けれど、クライブの胸に届いたのは確かだった。

彼はゆっくりと身をかがめ、私の額にそっと口づける。

「これで君は、俺の妻だ。」

私は手を上げ、薬指に嵌められた刺繍糸の指輪を見つめた。

細く、温かく、優しい指輪。

まるで、彼の心そのものだった。

「俺が死ぬまで、妻は君一人だ。」

その言葉を聞いた瞬間、心がふっと軽くなった。

私は目を閉じ、かすかに微笑んだ。

「だったら……あなたを、一人にはしない。」

その一言とともに、私は静かに、深い眠りに落ちていった。
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