売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
そう呟いた私に、クライブは一瞬黙り込む。

やがて、そっと私の手を包み込んだ。

「クラディア。あの時、気づいてやれなくてごめん。」

「……もういいの。だって、あなたはこうして私の隣にいてくれるから。」

「でも──俺にとっては、その薔薇のひと針ひと針が、君の涙の数に思えてならない。」

クライブの手が、そっと頬に触れた。

「これからは、泣かせない。どんな時も。」

私は微笑んで、小さく頷いた。

まだ糸の先に残る未完成の薔薇が、そっと揺れていた。

そして──
ついに袖口の刺繍が完成し、その布は慎重にドレス本体と縫い合わされた。

仕立て屋の手が最後の糸を締めた瞬間、部屋に静かな感動が満ちた。

襟元には、可憐な花弁の飾りがふわりとあしらわれ、白絹の布地に浮かぶ薔薇の刺繍が、やわらかな光を反射していた。

「……ああ、間に合いましたね。」
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