売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
仕立て屋は目頭を押さえながら微笑んだ。

「この模様……確か、花嫁道具に用いられる伝統的な薔薇ですね。」

私は頷いた。

「はい。昔、お祖母様の嫁入り道具に同じ模様が使われていたと聞いたことがあって……。どうしても入れたかったんです。」

「とてもお上手ですわ。刺繍に、たくさんの想いが込められているのが分かります。これはもう──世界に一つしかない、最高のウェディングドレスですわ。」

私は照れくさくなって、クライブの方を見た。

彼は、まるで息を呑んだようにドレスを見つめていた。

そして、私と目が合うと、柔らかく微笑んだ。

「綺麗だ……まるでクラディアそのものだな。」

その一言に、胸がきゅうっと熱くなった。

クライブがそっとドレスの裾に触れる。

「これは、もう宝物だ。……君を迎えるのに、これ以上のものはない。」

私は、袖口の薔薇をそっと撫でた。
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