売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
低く囁かれたその声に、私は恐怖に耐えきれず、ぎゅっと目を瞑った。

そして次の瞬間──

「……っ!」

熱が、突き刺さるように私を貫いた。

「──痛っ……いっ……!」

思わず声が漏れる。

全身が跳ねるように反応し、背中が強張る。

それと同時に、部屋がざわめいた。

「……まさか──」

クライブが、驚愕を押し殺すような声で呟く。

「ヴァージンだったのか……?」

彼の視線が、ゆっくりと叔父のほうを向く。

そして──

「おっと。これは……言い忘れてましたなぁ」

悪びれもせず、ニヤつく叔父。

その顔を見た瞬間、私は理解した。

──確信犯。

この人は、私が“そう”であることを知っていた。

それを“売り”にせずに、クライブに押しつけたのだ。

怒り、悔しさ、恥辱、そして……あまりに痛い身体。

涙が止まらなかった。

その時、クライブの声が、ふいに優しくなった。
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