売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「……すまん。状況が状況だけに……優しくできない。」

苦しそうな声だった。

責めるような響きではなかった。

ただ、事実を呑み込みきれず、それでも彼なりに私を気遣っていると、わかってしまった。

「……うん。」

私は、涙を零しながら、小さく頷いた。

逃げられないなら、せめて。

せめて、この人が“演技”の中だけでも──優しくあろうとしてくれるなら。

私は、傷だらけの誇りを握りしめたまま、目を閉じた。

激しい熱が、何度も何度も私の奥に打ち付けられた。

「……あっ、あっ、あっ……!」

動きに合わせて、息が震え、喉の奥から声が漏れる。

痛みはまだうっすら残っていたはずなのに、それ以上に、身体が何かを受け入れ始めていた。

「やぁ……ダメ……そんなにしたら……っ」

震える身体を抱きしめるように、クライブの腕が回る。

私は彼の肩にしがみつくようにして、耐えるのでも、拒むのでもなく、ただ受け止めていた。
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