売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
私は、胸がきゅっと締めつけられた。

クライブは、あの場で私を助けた。

でもそれは、父と子の間の力関係を壊す行為だったのだ──と、改めて気づく。

誰よりも強く見えたクライブが、

今まさに“家の力”と、“血の呪縛”に抗っているのだと──。

私は、そっと胸元を押さえた。

クライブ……。

昨夜、あんなに優しかったあなたが、今、たったひとりで闘っている。

「……あの男が“試してみろ”なんて言わなければ、昨夜は俺が、あの女を楽しんでいたんだぞ。」

カーティスの声が、壁越しに響いてきた。

私は息を殺しながら、寝室の扉の陰に立ち尽くしていた。

──“あの女”……私。

クライブの父親は、怒りを隠そうともせず、クライブに詰め寄っている。

「お言葉ですが……」

クライブの声は、どこまでも冷静だった。

「父さんには、あの女は太刀打ちできないですよ。」

「──何⁉」

怒鳴り声に、私は思わず肩をすくめた。
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