売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
そして、私は毎日少しずつ、ベッドカバーに刺繍を施すようになった。

それは、いつしか私の日課となっていた。

けれど──大きなベッドカバーに一針一針模様を描いていくのは、想像以上に大変な作業だった。

一週間かけて、ようやくたった一メートル分。

伝統的な模様は細やかで、目が疲れ、指先が痺れるほど。

「はぁ……これは大仕事ね。」

思わずため息が漏れる。

昔の花嫁たちは、これを嫁入り前に仕上げていたというけれど──

どれほどの時間と根気を注いでいたのだろう。

それでも、手を止めるつもりはなかった。

クライブのために、私だけの愛を込めた一枚を仕上げたい。

きっと彼がこの刺繍の意味を知った時、優しく微笑んでくれるだろうから。

……ただし、完成までは内緒。

クライブの足音が屋敷に響くたび、私は急いで刺繍枠を外し、布を棚にしまい込んだ。

まるで少女のように、秘密を抱えながら微笑む。
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