売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
そんなある日だった。

クライブが珍しく仕事に行かず、朝からずっと部屋にいると言い出したのだ。

「今日は、君の側でゆっくりしたい気分なんだ。」

「そう。たまにはお休みも必要だものね。」

そう微笑みながらも、私は内心焦っていた。

今日こそ、ベッドカバーの角に施す刺繍が完成する日。

あとは最後の花模様を刺すだけだったのに──。

けれどクライブが突然仕事を休み、朝から私の部屋でくつろいでいる。

もちろん、刺繍なんてできるはずもなく、ずっと棚の中に隠したままだ。

「クラディア?」

「……え?」

気づけばクライブが私の顔をじっと見つめていた。

私は慌てて、手にしていた紅茶のカップを両手で持ち直す。こぼさなくて良かった。

「ずっと上の空だ。何か考え事でもしていたのか?」

「い、いいえ。そんなこと……」
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