売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「……何をしているのかな?」

ああ、まさか刺繍しているなんて、言えるわけがない。

完成するまで、絶対にサプライズにしたかったのに。

「……読書をしているのよ。」

とっさに出た言葉に、私は自分でも驚いた。

でも、ここで動揺しては余計に怪しまれる。

だからクライブの目を、むしろ真っ直ぐに見つめ返す。わざとらしいくらいに。

「へえ。何の本?」

その問いに、紅茶をすすって時間を稼ぐ。

けれど喉はからからで、うまくごまかせない。

「……趣味の本よ。」

「趣味の?」

クライブの口角が、ほんのわずかに上がった。

その微笑みはやさしいけれど、目はまるで獲物を追い詰めるように鋭い。

「それは興味あるな。君がどんな本を読んでいるのか──知りたい」

そう言って、彼が手を伸ばしてくる。

私の膝に置いていた本の形をしたクッション──いや、本物の本があるわけじゃないのに、咄嗟に膝を隠す。

「えっ?なに?」

「その本を見せてくれる?」
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