売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
私は、見覚えのある赤いドレスを着たまま、豪奢なベッドの上に寝かされていた。

「えっ……?」

混乱の中で上半身を起こすと、目の前に──数人の男たちが立っていた。

みな、ニヤニヤと笑っている。

値踏みするように、まるで“獲物”を見るような目で、私を眺めていた。

背筋が凍る。喉が引きつり、声が出ない。

「クラディア、今度はおまえの番だよ」

その声に振り向くと、部屋の中央に立つ男が、手をすっと挙げた。

「300出そう。」

……え?

何の数字?
どうして?
何を、買うの?

理解が追いつかないまま、今度は一番右側の男がゆっくりと手を挙げる。

「……500だ。」

その瞬間、背中に冷たい汗がつっと伝った。

これが──競売。
私が“売られている”。

言葉にならない衝撃が、私の心を一気に締め付けた。

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