売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
気づけば私は、椅子に背中を預けていた。

視界がぼやけ、思考もゆっくりと遠のいていく。

──少し、眠いかも。

そう思った時には、もう意識は深く沈んでいた。

夢と現実の境界が滲み、誰かが肩を抱いているような気がして──

私は、そのまま、深い闇へと落ちていった。

どれくらい眠っていたのだろうか。

頬に触れたひやりとした感触に、私はゆっくりと意識を浮かび上がらせた。

「……う……ん……」

まぶたを開けると、そこには見知らぬ天井。

絢爛ではあるけれど、どこか薄汚れたシャンデリアが鈍く光を放っていた。

あたりを見渡せば、広くはないが装飾の重厚な部屋──どこかの古いサロンのようだった。

けれど、そこに漂う空気には、明らかな違和感があった。

──どうして、私は……?

身体を起こそうとすると、シーツがずるりと肩から滑り落ちた。
< 8 / 158 >

この作品をシェア

pagetop